施工期間
2018/02/01 〜 2018/02/02
説明ねじめ正一の『風の棲む町』という酒田市舞台の小説をご存知の方、多いと思います。
タイトルは『棲む』という言葉で、生物的な生活・息遣いを、非生物である風の制御不能な在り様に絡め、想起させる洗練されたものなのですが...だが待て、しばし。
現実と照らし合わせると、酒田の風がただ『棲んでいる』というのはあまりに控えめな表現な気がしませんか?
酒田の風はどうひいき目に見ても、慎み深く棲んでなんかいません。
タイガース優勝時の道頓堀の人々、あるいは江戸時代末期のええじゃないか騒動参加者と同程度踊り狂います。
しかも冬はほぼ毎日。
風に日本語が通じるのであれば伝えたいものです。大人になれ...と。
今回の事例はそんな『風の踊り狂う町』の大風に煽られて損壊した、酒田市TK様宅雨樋の交換工事です。
TK様のお宅は横長の平屋で、軒樋が平屋の軒に長く渡っていました。
北西から吹き上がった風が、雨どいを浮かせて金具から掛けはずれ、部分的に支えを失った軒樋が渡りの中心付近で折れており、さらにその時の衝撃で竪樋も瓦解していました。
ユニクロの金具にもサビがあり、近い将来における破損の可能性が高いこと。
落下していない樋も、それ自体の変形により水流勾配の再調整が困難なこと。
上記2点の理由から北面の雨どいの全交換が最良の選択と判断・提案し、ご了承いただけました。
冬場の天気の良い日を見計らって工事を進めていきます。
既存の軒樋および支持金具を外し、金具はステンレスのものを新規に取付けます。
水糸を使い、水流勾配を調整しつつ、風の振動や落雪による外力で緩まないようしっかりとビス止めを行います。
金具が取り付け終わると、次は軒樋を金具に乗せていきます。
軒樋は元の色となるべく近い色の合成樹脂製のものを採用しました。
恰好が決まり、水が意図した方向に流れていくことを確認した上で、専用の部品と接着剤と各部材の端をつなぎ止めて、更に針金で樋と金具を固定し、最後に竪樋部分をつなげて完成です。
長年の風との闘いで疲弊していた雨樋が、これからも『風の踊り狂う町酒田』で戦っていける...そんな頼もしさが感じられる程に蘇りました。
TK様、この度はお仕事させて頂きありがとうございました!