新型コロナに効果はある!?抗ウイルス機能のある塗料を紹介!

新型コロナに効果はある!?抗ウイルス機能のある塗料を紹介!

ウイルスは人の集まる公共施設や、安らぎの空間である自宅や自室を、危険地帯に変貌させます。今回は、そんなウイルスを撃退し安全地帯を取り戻す効果がある機能性内装用塗料を紹介いたします。

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この記事の目次

はじめに

ウイルスは、人間をはじめとした動き回る生物に媒介されると、指数関数的にその勢力を広げます。
学校、仕事場、病院、役所といった、日常的に人が集まる場所を拠点に、自宅や自室といった本来心安らぐプライベートな空間でさえにも侵入し、危険地帯への変貌させます。
ですが、私たち塗装業者は、そんな最小にして最大の危険であるウイルスから安全地帯を取り返すための『銀の弾丸』を持っています。たぶん。
その銀の弾丸とやらは何か。それは、私たち塗装業者が扱う『機能性塗料』に分類されるものの内、ウイルスに汚染されがちな空間や場所ないしは部分に対し抗ウイルス機能を付与する塗料です。
今回の記事では、そんな抗ウイルス性能のある機能性塗料の中でも、信ぴょう性の高い2製品を紹介いたします。

抗ウイルス効果のある塗料

今回紹介する製品は、日本ペイント株式会社の『パーフェクトインテリアエアークリーン』と関西ペイントの『アレスシックイ』です。両製品とも、塗装面に付着したウイルスの繁殖を阻止する機能を持っています。施工対象の下地は内壁のボードだけに限定されず、塩ビ・紙クロスや合板の上から塗装が可能です。
それぞれ、抗ウイルス性能以外にも特筆すべき長所がいくつかあるのですが、今回それらには深く触れるつもりはありません。別の機会に、製品のレビューという形で読者の皆さんにお届けしようと考えています。

パーフェクトインテリアエアークリーン

パーフェクトインテリアエアークリーンは、日本ペイント株式会社が2017年10月17日より販売している、比較的新しい塗料です。

可視光応答形光触媒

パーフェクトインテリアエアークリーンには『可視光応答形光触媒(かしこうおうとうがたひかりしょくばい)』が含まれており、これにより抗ウイルスを実現しています。
『光触媒』について先に説明しておきます。光触媒は『特定の波長の光にあたると、自らは変化しないけど代わりに周囲の物質に化学変化をもたらす作用をもつ物質』のことです。
例えば、植物。植物は太陽の光を受けた時、自身は変質せずに、二酸化炭素と水から酸素とデンプンを作る光合成を行います。だから、植物は光触媒の一種です。
光触媒作用を持つ物質の中で、製品に応用されているものの多くは酸化チタンです。
しかし、酸化チタンが光触媒として機能するのは、限られた光の波長に照らされた時のみであったため、製品への応用が利ききにくい問題がありました。そこで、酸化チタンと他の物質を混ぜて、屋内電灯の光でも光触媒反応が起こるように改良されたものが、ここでいう『可視光応答形光触媒』です。
つまり、蛍光灯の光でも光合成を行うように品種改良された植物のようなものです。

光触媒としての酸化チタンの抗ウイルス効果

酸化チタンは、紫外線に照らされることによって、周囲の水分子を酸素と水素に分解する性質があります。そして、その副次的な作用として、周囲の菌やウイルスも破壊するとされています。これが、一般的に言われる光触媒の抗ウイルス効果です。
では、この光触媒効果を売りにしているパーフェクトインテリアエアクリーンは、どの程度の抗ウイルス効果を有しているのでしょうか。それを示しているのが下記のグラフになります。
パーフェクトインテリアエアークリーンの仕様書データを元に作成
パーフェクトインテリアエアークリーンの仕様書データを元に作成
『ウイルス感染価』は、試料中に含まれる感染性を持っているウイルス粒子の数のことで、時間経過に伴うその数の変動で、試料の抗ウイルス性能が測定されます。
そして、従来の水性屋内用塗料とパーフェクトインテリアエアークリーンそれぞれに対して100万株程度のウイルス粒子を散布・4時間放置し、結果従来の水性屋内用塗料ではウイルス感染価に変化が無かった一方で、パーフェクトインテリアエアークリーンではそれが塗布直後よりも99.9%減少し100株程度になったことを観測したというのがこのグラフが示している内容です。

これだけ見るとなんか凄そうです。

パーフェクトインテリアエアークリーンについての懸念点

パーフェクトインテリアエアークリーンは、その試験で扱われたバクテリオファージQβというウイルス以外に対しても効果が期待できるとされています。しかし、これはあくまで『期待』であり、すべてのウイルスに対して有効性が保証されているわけではない上に、追加で他のウイルスをサンプルとした試験をガンガン行って、機能性の高さを広く知らしめようという動きも見られません。
そういう意味で、塗装業者の立場から見ると、製品としてちょっと心もとなげな印象を受けます。力を入れている製品ではないのかな…と。もっとも、発売されてから比較的日の浅い塗料ではありますので、今後追加の検証や施工の実績等増えていくのではないかと期待はしています。
それと名称が長すぎて言いづらいのも気になります。早口言葉なの?

アレスシックイ

アレスシックイは、関西ペイント株式会社が10年以上前から改良を繰り返しながら販売をしている屋内用の塗料です。

漆喰(しっくい)

アレスシックイはその製品名から分かる通り、伝統的な建築素材である漆喰が塗料となったものです。
そもそも漆喰とはなんなのでしょうか。日本漆喰協会が著した『漆喰の文化と化学』内で、日本の漆喰は下記のように説明されています。
消石灰(地中から発掘された石灰石を焼成し粉末化したもの)を主成分に、骨材、すさ(麻)、海藻のりなどの有機物を混ぜて練り上げたものである。
出典:沢辺大輔, 鳥越宣宏「漆喰の文化と化学」
日本家屋では、古くから主に内外壁に使用されてきました。
本来、漆喰壁は左官業者によって設えが行われますが、特殊な技術で塗料化されたことで、塗装業者が『塗装』に用いれるようになりました。

漆喰の抗ウイルス機能

漆喰を構成する材料の内の大部分を占めるのは消石灰です。抗ウイルス性という観点で考えると、この消石灰が多孔質であること、そして水に溶けると強いアルカリ性を発揮する性質であることが重要な意味を持ちます。
多孔質構造でウイルスを捕捉
多孔質である消石灰は、物理的な意味でウイルスの捕捉機能が高いです。下の写真をご覧ください。顕微鏡で拡大してみると、一般の水性屋内用塗料に比べて、消石灰の表面がより凹凸が大きく、深いことが見て取れます。この大きくて深い穴でより多くのウイルスをキャッチして逃さないのです。
出典: NICHIEI KAKOH CO., LTD. ハルシックイ 製品説明資料
出典: NICHIEI KAKOH CO., LTD. ハルシックイ 製品説明資料
強アルカリでウイルスを無害化
消石灰は、水に溶けた時だけ強いアルカリ性を示します。そのため、くしゃみや咳でウイルスに感染した飛沫が消石灰の表面に取り付くと、その飛沫の水分に溶けだし、その強いアルカリ性をもって、飛沫の中にいるウイルスのタンパク質や核酸を変性させます。その結果、ウイルスは増殖や複製といった機能を失うことになるというわけです。
消石灰が抗ウイルス効果を発揮するメカニズム
消石灰が抗ウイルス効果を発揮するメカニズム

アレスシックイの抗ウイルス性能

アレスシックイの抗ウイルス性能は高いと言えます。関西ペイントが大阪大学微生物病研究所に依頼して実施した試験では、アレスシックイ塗装済みの試験板に高病原性鳥インフルエンザウイルスを塗布したところ、およそ30分後には99.6%のウイルスの感染力が抑えられていることが観測されました。
出典: 関西ペイント, アレスシックイ仕様書
出典: 関西ペイント, アレスシックイ仕様書
また、高病原性鳥インフルエンザウイルスのみでなく、構造、形態、性質の異なる複数のウイルスに対しての有効性が確認されている点も見逃せません。
上の動画では、長崎大学熱帯医学研究所にてウイルス研究者の安田二郎教授がアレスシックイのウイルス不活性化効果について説明しています。これによれば、ウイルス不活性化の検証をした際の結果は下記の通りです。
アレスシックイのウイルス不活性化検証の対象ウイルスとその結果
アレスシックイのウイルス不活性化検証の対象ウイルスとその結果
ただし、検証の対象は最上段のウイルス4種で、類似ウイルスとして記載されいてるウイルスはあくまで検証の対象としたウイルスにあり方が似ているというだけですので、これをもって遍くウイルスに有効だとは言えない点にはご留意ください。

アレスシックイは新型コロナウイルスにも有効

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対してもアレスシックイのウイルス不活性効果は有効です。
関西ペイントと長崎大学感染症共同研究拠点が、実際に新型コロナウイルスを用いて、アレスシックイの抗ウイルス効果を検証したところ、同塗料に塗布部に5分間接触することで、コロナウイルス検体の99.9%以上が不活性化したという結果が出ました。
下記が、関西ペイントがこの結果を発表した2020年10月5日付プレスリリースへのリンクです。
「新型コロナに有効かもしれない」と「実験により新型コロナへの有効性が確認できている」では信頼感が大きく異なります。これで、アレスシックイは塗装による新型コロナ対策を検討中のお客さんや、その施工を行う塗装業者にとって、安心できる選択肢の一つとしての地位を確固たるものにしたように思います。

どちらの塗料がより良いの?

軍配が上がるのはアレスシックイの方だと思います。
一つ目の理由は、仕様書の内容にもネットに転がっているものにしても、アレスシックイに関連する情報の量が圧倒的にパーフェクトインテリアエアークリーンのそれの上を行ってることです。情報の量は時に人を混乱させますが、情報が足りないよりはましです。
二つ目の理由は、抗ウイルス効果の検証データの質です。どちらの塗料についても検証環境を確認できる立場にはないため、絶対に客観性が担保されているという確証はないですが、少なくともアレスシックイはそれを外部機関と協力して行い、かつ複数の対象に対して行っています。
どちらの塗料のほうがより抗ウイルス性能が高いのかという判断はここではしていませんし、するつもりもありません。なぜならパーフェクトインテリアエアークリーンについての情報が量・質ともに不足しているからです。
逆説的に、その情報量と質からアレスシックイの方が信用できそうという意味で、より良いと言えます。したがって、今後パーフェクトインテリアエアークリーンについての情報が充実してくれば、この評価が逆転する可能性も大いにあると言えます。

最後に

2020年3月現在、世界中が新型コロナウイルスによって恐慌状態に陥っていて、多くの方が苦しんでいるのをネットやテレビを通して見たり聞いたり読んだりします。無力感を感じつつ日々を過ごすしかない塗装業者ですが、それでも何かできることはないだろうかと思い今回の記事を書くことにしました。
拙い内容ですが、読んでくれた方にとって何か少しでも利益があればうれしいです。

special thanks