外壁材選択の重要性
色や雰囲気が好みに合った外壁を選ぶことは大事です。それでも外壁の本分が雨風や日差し、寒気や熱気から屋内の居住環境守ることだという大前提を忘れてはいけません。
このため、外壁材の特性とそれにまつわるメリット・デメリットをある程度把握し、それらを地域の気象条件と関連付けた上で、条件に合う外壁材を選び取るというプロセスを踏むことが肝要です。
外壁材には多くの種類が存在し、それらすべてを一挙に紹介するのは大変なため、今回はいわゆる『窯業サイディング』に的を絞って、そのメリット・デメリットについて記載していきます。
窯業サイディングとは
セメントと、木片等の繊維質および混和材を混ぜて成型し、高温、高圧の窯で硬化させることで、作られている外壁材です。
日本窯業外装材協会[一般社団法人日本窯業外装材協会 online:syurui.html]は、窯業サイディングが"新築戸建て住宅の外壁として75%以上に使用"されていると紹介しており、外壁材として圧倒的なシェアを誇っていることが伺えます。
成型加工技術やプリント技術の発展に伴い、様々な素材の質感や立体感を高いレベルで模した製品が多く作られるようになり、現在でもそのパターンバリエーションは増え続けています。
窯業サイディングのメリット
デザインが豊富
窯業サイディングの最大のメリットは、なんといってもそのデザインの豊富さにあります。
例えば、窯業サイディング最大手のニチハのケースでは、18㎜、16㎜、14㎜の製品をすべて合わせると170以上ものデザインが存在しており、さらにそれぞれのデザインに4種類ほどのカラーバリエーションが用意されています。
設計段階で外壁材の厚みを事前に絞ることになるものの、根本的な選択肢の数はニチハの外壁材だけでも700に近いということになります。
ニチハよりは数で劣るものの、KMEWや旭トステム外装などの他の主要メーカーも多くの商品ラインナップを有しており、それらを含めて考えた場合、デザインの選択肢はさらに増えることになります。
そう考えると、外壁材のデザインを選ぶ際、窯業サイディングについては、好みのデザインの外壁材が見つかりやすいと言えるでしょう。
質感や立体感に優れている
窯業サイディングはパターンが豊富なだけではなく、そのパターンの一つ一つも細部まで作りこまれていて、それがセメントと繊維質で出来ているとは思えないほど完成された質感や立体感を備えています。
レンガ調やタイル調、打ちっぱなしコンクリート調等など原材料の関係上親和性が高い柄はもちろんのこと、木目調やスタッコ調等の本来的に異なる原材料や工法で表現されるパターンについても、本物と見間違うほどに優れた仕上がりになっています。
特に近年においては、デザインデータに基づき塗料を用いて柄を『印刷』するというカラーリング手法で、その色合いや柄の味わいが自然素材に迫るレベルになってきており、よく見ても本物との見分けがつかないほどです。
本体価格が比較的安価
外壁材の価格は毎年なにかしら理由をつけて引き上げられています。ある時は原油の値段、ある時は原材料価格、ある時は人手不足、ある時は輸送コストの増大など、その理由は枚挙にいとまがありません。そして窯業サイディングもその例に漏れず、少しずつ値上げが進んでいます。
それでも尚、窯業サイディングの価格は他種の外壁材に比べて相対的に安いことに変わりは無く、材料費を抑えうるという点においては優秀な外壁材だと言えます。
窯業サイディングのデメリット
材料が重い
窯業サイディングの最大のデメリットはその重さです。下図で示す通り、一般的な製品厚みで計算した場合、一番軽いGL金属サイディングの3.8kg/㎡に比べ、窯業サイディングのそれは17.4kg/㎡とおよそ4.6倍重いです。
通常の窯業サイディングの寸法は一枚あたり長さ3,030mmで幅455mmであり約1.38㎡となるため、重さにして24kgほどです。これが一般的な住宅では100枚以上用いられることになるわけですから、総重量は相当なものになります。
窯業サイディングの重量による弊害は多岐に渡りますが、大きくわけて二つです。
工賃が高くつく
材料が重いということは、それだけ施工時に労力がかかるということです。
材料の重さが24kg/㎡程度だとすると、カットしたサイディングを地上で持ち運ぶ分にはそこまで負担は大きくありませんが、足場の内側に引き入れたり、2階部に引き上げる等するケースでは相当な労力を要します。少なくとも、外壁をカットして張上げるまでの一連の作業をすべて一人で行うことが困難なため、必然的に同作業については複数人で対応することとなるでしょう。
複数人でする作業には、当然ながら複数人分の工賃が発生します。先に申し上げた通り、窯業サイディングそのものは価格的にリーズナブルです。しかし、その重さ故に工賃が高くなり、結果として施工総額は金属サイディングよりも高くなってしまうことさえもあります。
余談ですが、ハウスメーカーが外壁材として窯業サイディングを支給する形で、一人でやっている自営業(いわゆる一人親方)の建築板金業者に仕事を安く請けさせるという構図をよく見かけます。自営の建築板金業者としては、継続的に仕事をもらうため泣く泣く安い工賃で仕事をうけざるを得ないわけですが、そうした際に応援の職人を呼ぶ予算も確保できず、窯業サイディングを頑張って一人で張って腰痛を患うなんていうのも珍しい話ではありません。
お客さんにしてみれば、外壁工事の価格は高いよりは安いほうが嬉しいですし、ハウスメーカーからしてみればお客さんに安く外壁工事を提供しかつ自分たちの利益を最大化できれば嬉しいというのは自明のことです。しかし、その喜びの陰でひっそり泣いている誰かがいるならば、その誰かに最高の仕事を期待するのは間違っています。窯業サイディングを一人で張るはめにならないような適切な価格で、適切な質の工事をすることが当たり前のやさしい業界になってほしいですね…。すみません。脱線しました。
地震や強風の時に剥がれ落ちてきたら危ない
窯業サイディングは壁面に対し、専用釘もしくは専用金具で固定されます。いずれの場合でも、窯業サイディング止付け専用に製造されているため、通常時においてはそれがはがれて落ちてくるということはありえません。
ただ、建物の経年劣化と共に、釘や金具も同様に劣化することは確かで、そのように止付けの劣化が進んだ状態で地震や強風による大きな揺さぶりが発生した場合には、窯業サイディングは比較的簡単に剥がれ落ちます。
剥がれ落ちてくるのが一階部分に張った窯業サイディングならまだしも、より上の階から剥がれ落ちてきた場合には大事故となりえます。
窯業サイディングは背の高い建物の上階への適用をなるべく避けること、どうしても使いたいという場合は釘・釘周辺部や止付け金具の状態には常に注意を払っておくべきこと、という点を心掛ける必要がありますね。
凍害のリスクが常に付きまとう
凍害とは骨材と固化材を混合して固めて作るタイプの製品の表面がポロポロと剥がれて落ちる現象のことを指します。窯業サイディング以外だとコンクリートや瓦などでも同様の現象が発生することがわかっています。
凍害が発生している窯業サイディング
凍害へ発生間への第一幕は、窯業サイディング本体内部への水の侵入により始まります。サイディング内部に水分が入り込む原因は、大きく分けて2パターンとなっており、一つ目はシーリングの劣化により保護を失った外壁材断面からの水の吸い込み、二つ目は紫外線による外壁材防護塗膜の劣化に伴う窯業サイディング表面からの水の染み込みです。
実際に凍害が発生するのは、冬場です。冷気によって、サイディング内部に侵入した水分が凍り付き、凍り付いたことで膨張した体積によりサイディングは内側からえぐり取られます。
一度凍害が発生してしまうと、その外壁は塗装での補修はできなくなります。凍害が発生した部分は半粉状のザクザクした状態になるため、塗料を塗りこんだとしてもまたすぐに剝がれてきてしまうからです。
塗装での補修ができないということは、外壁の張り替えまたは上からの重ね張りくらいしか選択肢がなくなるということで、つまりは補修にかかる費用が跳ね上がるということです。
凍害は冬場の寒さが厳しい地域において発生しやすいため、そういった地域にお住いの方は、窯業サイディングを外壁材として採用する上で、メンテナンス費用がかさんでしまうリスクをある程度覚悟しておいた方が良いかもしれません。
窯業サイディングにまつわる問題の中でおそらく最も猛威を振るっているのが『凍害』と呼ばれる状態異常です。本記事ではそんな凍害についての解説ならびに凍害が起きてしまった場合の補修方法についてかいつまんだ説明をしていこうと思います。
凍害についてより詳しくまとめた記事のリンクになります。
おすすめの窯業サイディングメーカー
ニチハ
窯業サイディングのメーカーについて語るうえで、ニチハを外すことはできません。
先に記載した通り、ニチハは170種類程度の製品ラインナップを持っています。その選択肢の広さ故、ことデザイン面においてはニチハから選べば好みの窯業サイディングが必ず見つかります。
KMEW(ケイミュー)
総合外装メーカーケイミュー(KMEW)の外壁・外壁材ページ。ECO外壁材である光セラ(光触媒コーティング)や、汚れにくく・色あせしにくい親水セラなど、デザイン性と機能性にすぐれた外壁材をご紹介します。
外部リンク
KMEWは窯業サイディング市場ではニチハに次ぐシェアを持っており、ニチハ同様窯業サイディング業界の巨人と言えます。
外壁材の『機能性』に重きをおく製品開発とマーケティングにより、窯業サイディング一般の『高耐久化』の流れを作ったメーカーで、『光セラ』などの先進的な製品を扱っています。
まとめ
まとめると窯業サイディングのメリットはそのデザインの豊富さと材料自体の安価さにあると言えます。
一方で窯業サイディングには『相対的に重いこと』からくる『工賃の高額化』と『倒壊時の危険性』、そしてその素材の性質上『凍害のリスクが付きまとう』というデメリットがあります。
以上、窯業サイディングを外壁材として採用することのメリット・デメリットの紹介でした。新築、リフォームにおいて窯業サイディングの採用をご検討の方の参考になれば大変うれしいです。
長くなりましたが、最後までお読みくださりありがとうございました。
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