はじめに
雨樋が故障はいくつかの主だった原因により引き起こされます。
そのうちの最たるものが、落ち葉、枯れ葉の詰まりで、これによる水溢れ、はめ込みの外れなどのトラブルを高頻度で発生させます。
この記事では、そういった落葉詰まりの発生の仕方を簡単に説明した上で、これに対処する方法を3つ紹介していこうと思います。
落ち葉詰まりに起因する雨樋トラブル
広葉樹であれ、針葉樹であれ、日本各地に植林または自生する樹木は晩夏から晩秋にかけて、その身にまとう葉を散らします。
葉は基本的に地面に落ちますが、樹木の位置や風の吹き方によっては屋根の上に落ちます。
屋根の上に溜まる落葉
そのうち多くは風によって何処かへ飛ばされていきますが、雨が降った場合には屋根の傾斜を伝う雨水と一緒に軒樋に落ちます。
そうして軒樋に溜まった落ち葉が集水器周辺に集められ、そこからじわじわと層を成していきます。
その過程で、最初は形を保っていた落葉も徐々に腐食し、最終的には腐葉土となって体積します。
落ち葉が腐葉土化して雨樋の中で生命が芽吹く
軒樋に落ちた雨水は目の細かい腐葉土によりその流れをせき止められ、結果として軒樋から溢れ出します。
雨樋からの水溢れ
水溢れが恒常的に起きることで、軒樋の一定ヵ所に水圧が集中するようになります。
その帰結として、許容できる以上の力がかかった部分のはめ込みが外れたり、はめ込みが無い場合でも形状の不可逆的変化が発生します。
落ち葉詰まり問題への対処方法
雨樋の落ち葉詰まりに対処する方法は大きく分けて3つあります。
一つ一つ見て行きましょう。
雨樋の掃除
落ち葉詰まりに対処する方法の中で、最もスタンダードなものは、軒樋の掃除です。
掃除の実行方法は皆さまのご想像通りで、軒樋に手を突っ込み、溜まった落ち葉を掻きだすというものです。
雨樋の掃除
これにより、落ち葉が体積し、腐葉土化することがなくなるため、軒樋ひいては雨樋系列全体の健康を保つことが出来ます。
雨樋の掃除は、屋根上から行うのが一般的です。
作業内容として単純なため、自分でも出来そうと思ってしまいがちですが、屋根の先端での作業となり、転落のリスクが非常に高い危険な仕事であるため、素直に屋根業者に依頼するのが賢い選択だと思います。
雨樋掃除のデメリット
雨樋掃除の費用は危険作業であること鑑みても、そこまで高くありません。
業者にもよりますが部分的掃除なら6,000円、建物全体の樋掃除であっても20,000円程度で済みます。
ただし、一度掃除すれば、以降掃除の必要がなくなるというわけではないため、定期的にその費用が発生します。
雨樋を常に健康に保ちたいのであれば、最低でも2~3年に一度は雨樋の掃除を行う必要があり、さらに言えばこの頻度は建物と樹木の位置関係が近ければ近いほどより高くなります。
つまり、短期的に見れば、そこまで値の張らない施工であっても、長期的に見ればつもり積もってばかにならないランニングコストとなっていきます。
落ち葉よけネットの設置
雨樋への落ち葉詰まり対策として次に紹介するのは、落ち葉よけネットの設置です。
落ち葉よけネットとは、樹脂でできた目の大きな網であり、これを軒樋に設置することで屋根から押し流されてくる落葉がの軒樋に落ちるのを防ぐ効果が期待できます。
製品写真: エスロネット(エスロン)
設置の費用もお手頃で、使用する材料のメーカーや取り付け位置にもよるのですが、メートルあたり2,000~4,000円となっています。
取付け作業自体はそこまで複雑ではないため、DIYも可能です。DIYをすればかかるのは材料費(メーターあたり1,000~2,000円程度)のみであるため、かなりお得に落ち葉対策が出来ますね。
なお、落ち葉よけネットのDIYをする際には、屋根上や脚立・梯子からの転落するリスクが付きまとうので、2階以上の部分にネットをつける際には、素直に屋根業者に依頼するべきです。
落ち葉よけネットのデメリット
落ち葉よけネットがあると断然落ち葉が溜まり難くなります。しかし、それでも落ち葉は網目をくぐって少しずつ、確実に蓄積されていきます。
帰結としては、結局雨樋の掃除を定期的に行うことになり、当然その費用が発生してしまいます。
落葉よけ機能付き雨樋の取り付け
雨樋落ち葉詰まり問題への対処方法として次に紹介するのは、落葉よけ機能を持っている雨樋の取り付けです。
落葉よけ機能付きの雨樋は、雨樋それ自体が落ち葉よけを想定して製作されているため、先述した落ち葉よけネットよりも格段に落ち葉よけ性能が高いです。
また、それだけ落ち葉よけの性能が高いわけですから、軒樋にはほとんど落ち葉が入ることがなくなり、したがって雨樋掃除などのメンテナンスを行う必要性も極めて低くなります。
いくつかある落葉よけ機能付き雨樋の中でも、特に強い存在感を放っているのが、以下の2つの商品です。
ユキノキ・すとっ葉゜(タニタハウジングウェア)
この文字化けしたような名称の製品、ユキノキ・すとっ葉゜(ゆきのき・すとっぱ)はタニタハウジングウェアが開発した『全天候型』雨樋で、その売りの一つが落葉よけ機能となっています。
ユキノキ・すとっ葉゜は樋の蓋の先をアールにすることにより、水の表面張力を利用して雨水だけをその部分に伝わせ樋の中に流し入れるという、大胆な発想で落ち葉よけ機能を実現しています。
日本の伝統的な雨仕舞(受け流しの発想で雨水を制御し地上に落とす建築板金の技術的哲学)に基づいた機能美とこだわりが見て取れる、施工業者としてぜひともお勧めしたい一品です。
元旦内樋(元旦ビューティ工業)
元旦内樋(がんたんうちどい)は元旦ビューティ工業が開発した軒樋であり、簡潔に言うと雨樋に蓋をしてそこに穴を開けた製品です。
落ち葉よけ機能は細かい蓋の穴から水だけが流れ落ちていく仕組みにより実現されています。
穴の上に落ち葉が溜まったらどうするんだよ…と思うかもしれませんが、そこは大丈夫。屋根同様に樋の蓋にも傾斜をつけることにより、落ち葉が溜まりにくい設計になっています。
元旦内樋の良いところは、屋根と似通った形状になっていることにより、雨樋として強い主張をしないことです。デザイン性と機能性を兼ね備えた理想的な製品ですね。
落葉よけ機能付き雨樋のデメリット
これら落葉よけ機能付き雨樋は、取り付けの初期費用が高いという極めて明白かつクリティカルなデメリットを持っています。
製品自体の仕入れ価格が高いこと、そしてその取り付けが通常の雨樋に比べて手間がかかることにが、取り付け費用の高額化の原因です。
具体的には材工共でメートルあたり7,500~9,000円の費用となっており、これは半丸の塩ビ製軒樋の取り付け費用の倍以上の値段です。
高品質な製品であることは間違いないし、長期的に見ればメンテナンスコストを節約できることを考えれば自然な値段だということはわかります。しかし、雨樋にこの金額を使うくらいならその分他のところのグレードアップに回したい…と感じるのが一般的な感覚なのかもしれません。
雨樋への落ち葉詰まり対処法のまとめ
ここまでの内容を簡潔にまとめると以下のようになります。
雨樋への落ち葉詰まりには『定期的な掃除』、『落ち葉よけネットの設置』、『落ち葉よけ機能付き雨樋の取り付け』という3つの有効な対処方法がある。
そして、
施工コストは『定期的な掃除』、『落ち葉よけネットの設置』、『落ち葉よけ機能付き雨樋の取り付け』の順で安いが、そのメンテナンス頻度は『落ち葉よけ機能付き雨樋の取り付け』、『落ち葉よけネットの設置』、『定期的な掃除』の順で低くなる。
このくらいおさえておけば、不意に雨樋の落ち葉が詰まりが発生しても、慌てず冷静に取るべき対応を考えられるかと思います。
さいごに
雨樋は、外壁ひいては建物の健康を守るうえで重要な部材です。
これを機会に、ご所有の建物の軒樋に落ち葉が溜まっていないか、一度ご確認いただくのも良いかもしれません。
長ったらしい記事になってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは皆様ごきげんよう。