金属サイディングのメリットとデメリットとは?

金属サイディングのメリットとデメリットとは?

外壁材の選定は、建物の寿命に大きく影響を与えるため慎重な選定が必要です。とはいえ、外壁の種類は多岐にわたるため、全てを把握するとなるとかなりの時間と根気が必要です。このページでは、皆様の労力を少しでも軽減させるべく、さしあたり金属サイディングをピックアップして、メリット・デメリットと共にご紹介いたします。

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この記事の目次

外壁材選択の重要性

建物の新築、増築、リフォームの成否は、建物を取り巻く環境やメンテナンス効率を念頭においた上で、適切な外壁材を選べるかどうかに大きく左右されます。
しかしながら、建設時のドタバタの中、外壁材の選択が後回しにされてしまい、ともすればいつの間にか設計士やハウスメーカーがあらかた決めていて、選べるのは色だけだったなんていうことになってしまいがちです。そんな事態を避けるために、外壁材についての知識をある程度頭に入れた上で、しっかりと検討する時間を取って事にあたりたいところです。
とはいえ、種類が多岐に渡る外壁材のそれぞれの特徴を網羅し把握するのはそう簡単ではありませんので、さしあたり『金属サイディング』に絞って、メリットとデメリットを紹介していきます。

金属サイディングとは

ガルバリウム鋼板やアルミなどの金属の鋼板の裏に押出成形断熱材を仕込んだタイプの外壁材です。
近年では成形・プレスして模様を浮き上がらせることで他素材の質感を再現したり、金属特有の質感を活かしてオシャレさを演出したものなど、様々なデザインのものが市場に出回っています。

金属サイディングのメリット

凍害に強い

凍害とは窯業サイディングの表面が一部ポロっと取れて凸凹が生じる現象のことを指します。
窯業サイディングは原材料の性質上、水を良く吸います。窯業サイディングは、その製品出荷直後には健康な保護塗膜が外部からの水の染み込みを遮断しますが、この保護塗膜の経年劣化に伴い徐々に自身への水の侵入を防止できなくなっていきます。そして、冬場の冷気によって、この染み込んだ水が凍り付き、凍り付いたことで膨張した体積によりサイディングは内側からえぐり取られます。これが窯業サイディングに凍害が発生するメカニズムです。
窯業サイディングの凍害
窯業サイディングの凍害
金属サイディングの場合、(サビ等が発生していなければ)水がしみ込むことはまずありません。
従って、北海道や、東北、北陸などの寒さが厳しく、凍害が起きやすいとされている地域にて家を建てる、リフォームする場合は、外壁材に金属サイディングを採用するメリットが大きいと言えます。

断熱性能が高い

金属サイディングは他の現行のどの外壁材よりも断熱性能が高いです。この断熱性能は、金属サイディングの心材として使用されているウレタンフォームにより実現されています。
断熱材と鋼板が一体となり金属サイディングが構成されている。
断熱材と鋼板が一体となり金属サイディングが構成されている。
下図は、金属サイディングを含めた主要な外壁材の熱伝導率を比較したグラフとなっています。熱伝導率とは、簡単に言うと『対象物質を挟んだ両サイドの領域からの熱の伝わりやすさの指標』のことで、値が小さいほどその物質が温度の交流をより遮断する能力が高いということになります。
グラフは[日本金属サイディング工業会]のデータを元に作成
グラフは[日本金属サイディング工業会]のデータを元に作成
金属サイディングの熱伝導率(W/mk)は0.026と窯業サイディングの場合の0.15と比較しておよそ6倍、そしてモルタルの場合の0.13と比較して50倍となっており、このことから金属サイディングの断熱性能が驚くほど高いことがわかります。
つまり、金属サイディングを外壁材として使用すれば、夏場の熱気と冬場の寒気から屋内をより効率的に保護できることになり、したがってエコで快適な居室環境を実現しやすいということになります。

地震に強い

金属サイディングは外壁材としては驚くほど重量が小さいです。どのくらい軽いか、他の外壁材と比較してみたものが下のグラフです。
各材料の一般的な製品厚みを前提とした場合、ガルバリウム鋼板(GL)の金属サイディング(15㎜厚)の1平米あたりの重量(kg/m2)は3.8と、窯業サイディング(15mm厚)の17.4に比べると4.6倍程度軽く、またALC(100mm厚)の65と比べると17倍軽いということがわかります。
外壁材が軽いことは、地震発生時における建物への負荷を軽減させるという点で大きな意味を持ちます。
建物は地震の横振れにより前後左右に揺さぶられ、特定部位における構造耐力の限界を超えた圧力が加わることで倒壊することになりますが、外壁材が軽いと構造の局所へ集中する圧力が幾分か軽減されることで未然に建物の倒壊リスクを抑えることができます。
つまるところ、金属サイディングその軽さゆえに地震に強い外壁材と言えるのです。

外壁重ね張り(カバー工法)リフォームに使用できる

重ね張り工法による外壁施工の様子
重ね張り工法による外壁施工の様子
既存の外壁の上から重ねて張ることが出来るのも金属サイディングの特徴と言えます。
既存の外壁の上に金属サイディングを重ねる工法は『重ね張り工法』もしくは『カバー工法』と呼ばれており、理論上外壁の二重化による断熱性能向上効果が期待できるほか、工事中の屋内への雨風の侵入に頭を悩ませなくて済むことから、住宅リフォーム工事の際に採用されることが多くなっています。
既存の外壁に新規の外壁を張るという工法の性質上、新規の外壁材を重量の大きい窯業サイディングとすることは避けるべきです。地震が起きた際に建物の倒壊を招く一因になることはもとより、地震が起きなくとも強風等によるの通常であれば取るに足らない振動等であっても建物が倒壊してしまうリスクを増大させます。
金属サイディングは、その軽さゆえに既存の外壁の上から張ったとしても建物の躯体に大きな負荷を与えません。
そこに住んだままリフォームを進めることができ、さらに建物の断熱性能も向上させる、そんな一挙両得の重ね張り工法は金属サイディングを使用するからこそ実現できるのです。

施工者への身体的負担が少ない

金属サイディングはその軽さゆえに、現場にて取り付け作業を行う職人への身体的負担が少ないです。
職人の身体的負担が小さくとも、お客さんにとってのメリットにはならないのではと思った方。その考えは間違っています。
職人の身体的負担が少ないことで、例えば、窯業サイディングだと3人1組で施工しなければいけなかった外壁を2人1組でこなせる…という具合に施工を少人数で終わらせることが出来るので工賃を抑えることが出来ます。
後述するように、金属サイディングは副部材を含めると材料費が高くつくのですが、その分工賃を抑えることができるため、総合的に考えると窯業サイディングより少し値が張る程度の費用で済むことが多いです。少なくとも弊社で施工する場合はそのような価格付けをしています。

金属サイディングのデメリット

意外と専門性が問われる

金属サイディングは、モルタルやALC同様、施工に専門性が問われるケースが多いです。
『役物』という外壁の隅部や端部、土台部や目地部に配置される部材を建物の原寸に合わせて現場加工する必要があるためで、それを過不足なく適切に行うためには普段から鉄板を切り折りしている建築板金工の技術と知識が必須です。
ただし、建築板金業者は建設業者の中でも絶対数が少なく信頼できる業者を探すのが難しいこと、そして探し当てたとしても数か月先まで予定が埋まっているなどが予想されることなどの理由から、仕事を依頼する先を見つけるのに苦労する場合も考えられます。

見た目の『金属感』が拭いきれない

しかし、それでもなお異種材系のパターンは細部の作りこみが大味だと言わざるをえません。
金属サイディングのデザイン性は年々進化しており、それに伴って木目調やレンガ調、スタッコ調など金属以外の素材に寄せた製品も増えてきました。また、造形の技術や塗装の技術などの発展に伴い、以前よりもそれら異主材のパターンの質感も本物に近づいています。
同じ『サイディング』というくくりの中で、金属サイディングと比較されがちな窯業サイディングの方は、木目調等の異主材パターンの完成度が著しく高いことも相まって、なおさらこの点が金属サイディングのデメリットとして強調されるように思います。
結局のところ金属サイディングは1枚の鋼板にプレスしてパターン付けがなされるため、本物のような細かい凹凸まで再現することが現在の技術では困難であることがうかがえます。
外壁材としての質は申し分ない金属サイディングが市場においてより多くのシェアを奪えるかどうかは、この異種材パターンの質感の作りこみにかかっているといってもいいかもしれません。今後に期待です。

材料費がかさみがち

前述しましたが、金属サイディングは材料の値段が他の外壁材に比べて高めに設定されています。
外壁材そのものの値段も窯業サイディングのそれに比べると少し高いのですが、それに加えて『役物』と呼ばれる専用の副部材分の費用も上乗せされます。
役物とは、ざっくり言うと、下記の図に示されている部位に配置するサブパーツのことを指します。『土台水切り』、『中間水切り』、『小口隠し』、『出入隅』、『スターター』等が役物の代表例です。
窯業サイディングの場合、工法にもよりますが役物は4~5種類程度で済みます。一方、金属サイディングの場合は、この役物がどんなに少なくても9~10種類は施工に必要です。
また、金属サイディングの価格は、製品入れ替えのタイミングで徐々に吊り上げられる傾向にあり、今後も少しづつ上がっていくことが予想されます。
金属サイディングは加工がしやすく、持ち運びも楽なため、施工性は良いと思います。その分、施工業者が技術料を低めに設定することで材工共における施工費用総額を低廉化していますが、それでもなお窯業サイディングのそれに比べ少し高くなってしまうのが実情です。

錆びにくいけど環境によっては錆びる

金属サイディングに生じた錆び
金属サイディングに生じた錆び
金属サイディングの表面を覆っているのは、多くの場合ガルバリウム鋼板(GL鋼板)です。アルミ製のものもありますが、メジャーではありません。
ガルバリウム鋼板は、アルミニウム55%+亜鉛43.4%+シリコン1.6%で配合された合金を、鉄板にメッキして作られる鋼板です。
従来の亜鉛メッキ鋼板(トタン)と比較すると、防錆機能の向上が格段に高いこのガルバリウム鋼板ですが、それでもやはり環境によっては錆びます。とりわけ、常時浸水しているような場所に取り付けられている場合には、ガンガン錆びていきます。
そのため、金属サイディングを外壁材として採用する際には、できるだけ建物の形状をシンプルにし、雪や水が壁面と接触して滞留しやすい部分を減らすなどの工夫が必要になってきます。

おすすめの金属サイディングメーカー(ブランド名)

アイジー工業(アイジーサイディング)

アイジー工業のロゴ
アイジー工業のロゴ
日本で初めて防火認定付きの金属サイディングを発売したメーカーで、外壁市場における金属サイディングの浸透の嚆矢となった存在です。
リフォーム産業新聞の『設備建材マーケットデータ』によると、金属サイディング市場におけるアイジーのシェアは1位で全体の40%を占めているとのこと。(※このデータは、2014年のものなので情報の鮮度は低いです。)
アイジーが発売している製品を一言で表すとすれば『安心・安定』でしょうか。
まず、実績のあるロングセラー商品を多く取り揃えており、施工やデザイン選定に失敗するというリスクが少ないため「アイジーでいけば間違いない」感があります。…いや、思考停止しているわけではなく。

ニチハ(センターサイディング)

ニチハは窯業サイディング業界の最大手メーカーですが、金属サイディング業界でアイジーに引き続いてシェア2割の業界2番手です。(※このデータも、2014年に掲示されたリフォーム産業新聞の『設備建材マーケットデータ』のものなので情報の鮮度は低いです。)
製品の特長としては、ほぼすべての製品の厚みが18mmと、アイジー含めたのメーカーに比べると3㎜増しであることが挙げられます。
この+3㎜の厚みは心材である断熱材を増すことにより実現されているため、その分ニチハの金属サイディングは他のメーカーの製品よりも断熱性能や遮音性能に優れていると言えます。
断熱材の厚み分、製品価格が高いのかと思いきやそういうこともなく、平米あたりの単価はアイジーとほぼ変わらないか、若干安いくらいまで抑えられているため、コストパフォーマンス的には良好と言えます。

まとめ

総括すると金属サイディングのメリットは『軽さ』ゆえの高い『施工性』と『耐震性』、材質ゆえの『対凍害性』、そして構造ゆえの『断熱性』にあると言えます。
金属サイディングのデメリットは、金属であるがゆえの『サビとの因縁』と『隠しきれない金属感』、建築板金の技術が必要になるがゆえの『業者探しのむずかしさ』、そして高機能ゆえの『材料値段の高さ』であると言えます。
以上、金属サイディングを外壁材として採用することのメリット・デメリットの紹介でした。新築、リフォームをお考えの方の参考になればうれしいです。
長々と長文を書き連ねてしまいましたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。

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