はじめに
今回の記事では私たちの活動エリアである酒田・鶴岡といういわゆる山形県庄内地域を対象として、屋根・外壁塗装に一番適した時期について解説していこうと思います。内容的には、一般的に塗装に適しているといわれている条件の確認と、各季節毎の気候データの提示、そしてそれら2点を相互参照して導き出した酒田・鶴岡における屋根・外壁塗装に最も適した時期の紹介の3本立てとなっています。それではさっそく見て行きましょう。
塗装に適している条件
前提として、今回のテーマが『酒田・鶴岡における屋根・外壁塗装に最適な時期』であるため、“塗装可能な条件”ではなく、“塗装に適した条件”を明らかにしていくことにします。なお、“塗装可能な条件”については、溶剤系塗料の場合という限定付きで下記の記事でまとめているため、気になる方はご覧ください。
12月、1月、2月あたりの真冬の時期には外壁や屋根の塗り替え工事ってできないの?というお問い合わせが最近多いです。よい機会なので、酒田や鶴岡を含む庄内エリアでの真冬の塗装工事の可否について、データに基づいてお話しようと思います。冬場に屋根や外壁の塗装をお考えの方は是非お読みください。
この記事内に“塗装可能な条件”についてまとめた項があります。
塗装に適している気温と湿度
元日本塗装工業会専務理事の高橋考治氏は著書の中で、下記のように説明しています。
自然乾燥型の塗料は、いずれの場合も、一般にいわれる常温によって乾燥・硬化するように設計されているが、その条件には限界があり、また湿度においても同様である。
出典:高橋考治『これだけは知っておきたい塗装工事の知識』より
言い換えれば、世に出回っている塗料は常温と標準湿度で塗装することを前提に製造されていて、その前提から大きく逸脱する気温や湿度で塗装したらダメ、ということですね。
また、気温は高ければ高いほど乾きが速いけれども、あまり高すぎると表面だけが速く乾いて内部の乾きとのバランスが取れず、ひび割れを引き起こしてしまいます。これは異常早期乾燥と呼ばれていて、湿度が低すぎることでも同様の問題が生じます。そのため、規定の気温や湿度の範囲内にある環境下で塗装工事を行うことが望ましいです。
では塗装工事の理想とされる温度・湿度の具体的な規定値とやらはどのようなものなのかという疑問が湧いてくると思います。それに対し、同著は下のような図の提示をもって回答に代えています。
塗料の乾燥における温・湿度の関係
この図から読み取るに、塗装に適している気温の条件は10度以上30度以下で、塗装に適している湿度の条件は45%以上80%以下ということになりますね。
塗装に適している風速
意外に思われるかもしれませんが、塗装工事において風は重要な役目を果たしています。風は塗料の臭気を分散させてお客さんや塗装職人の体調不良を未然に防ぐとともに、塗装面の乾きを良くする役目を担っています。
その一方で、強すぎる風はトラブルの原因にもなります。塗装面の異常早期乾燥を引き起こしたり、地面のチリを巻き上げ乾燥前の塗膜に付着させたり、養生を飛ばしたりなどあの手この手でお客さんと塗装業者を苦しめます。なお強風が原因のトラブルとその対応については、下記の記事にて詳しくまとめていますのでよろしければご参照ください。
外壁塗装をする際、塗装工事を依頼するまではもちろんですが、塗装工事が始まってからもいくつか気を付けるべきポイントがあります。今回は特に、酒田市や遊佐町に地域を絞って、それら気を付けるべきポイントについてお伝えしていこうと思います。酒田市や遊佐町は風が強いため、強風にまつわるトラブルと、気を付けるべきポイントが話の中心です。
つまるところ、風は無風でも強すぎても塗装には適していません。では、具体的にどの程度の風速が塗装に適しているのでしょうか。これを考えるにあたり、『ビューフォート風力階級表』が大いに参考になります。『ビューフォート風力階級表』とは風の強さを風速で分類し尺度付けした表のことで、そこには表形式で下記のような説明が載っています。
ビューフォート風力階級表(気象庁資料を元に作成)
この表を基準に考えた場合、塗装に最適な風速は砂埃が舞わない程度、かつ風の流れを感じることが出来る状態、つまり風速1.6m/s以上5.4m/s以下の範囲(表上の風力階級でいうと2と3)くらいと考えるのが妥当だと思います。異論は認めますが、そういうことにしておいてください。
塗装に適している降水量
『塗装に適している降水量』というフレーズ自体に矛盾の匂いを感じますが、敢えて記述を続行します。
まず、降水していて、水分に直接さらされている対象に塗装することは不可能です。もし仮にその状態で塗装を断行すれば、塗膜が形成される前に付着した水分と一緒に流れ落ちたり、鉄部の場合だと防錆効果の不良が発生したりなどします。
そのため、一日中降水している日は、塗装ができません。この観点から考えると、数値ゼロというのが、こと降水量に関しては一番塗装に適している状態と言えます。
酒田・鶴岡の気候
酒田、鶴岡は同じ庄内地域ということもあり、総合的に見れば気候はお互いに似通っています。とはいえ、比較する項目(例えば風速など)によっては看過できない差があったりするので、そういった点を取り上げつつ、両市の一年を通した気温や湿度、風速や降水量を見て行きましょう。
酒田・鶴岡の平均気温
下の図は、酒田と鶴岡での2015年から2019年の5年間における月ごとの平均気温を示したグラフです。両市の気温および気温の変化傾向は非常に似通っており、当たり前に冬場が寒く、当たり前に夏場が暑くなっていることがわかります。月ごとの変化については、1月の鶴岡市1.9℃、酒田市2.1℃という数値を最低とし、翌月2月以降は毎月5℃程度上昇しつつ、8月に両市とも25.8℃という最高値に到達した後、また1月に向けて毎月5℃程度ずつ下降していくという気温変遷が見て取れます。
気象庁の過去気象データのうち、2015から2019年までの統計をもとに中山板金塗装工業で作成。
酒田・鶴岡の平均湿度
気象庁のデータには鶴岡市の月ごとの湿度記録がなかったので、同じ庄内地域内の酒田市と鶴岡市の湿度はそこまで違いは無いであろうという憶測の下、酒田市の湿度記録をもって酒田・鶴岡の平均湿度の話を進めていくことにします。
下の図は、酒田市の2015年から2019年までの5年間における月ごとの平均湿度をグラフ化したものです。酒田市の月ごとの平均湿度は3月の65%が最低値、7月の76.2%が最高値となっています。月ごとの湿度変化に目を向けると相対的に2月から5月が低く、6月から9月に高くなり、10月から1月までが中間値ぐらいになるようです。
気象庁の過去気象データのうち、2015から2019年までの統計をもとに中山板金塗装工業で作成。
酒田・鶴岡の平均風速
下の図は、酒田と鶴岡の2015年から2019年の5年間における月ごとの平均風速をグラフ化したものです。月ごとの変化傾向だけについて言えば、酒田市、鶴岡市共に11月から翌年2月あたりまでで平均風速が最大値に達した後、徐々に穏やかになり、6月から9月にかけてそれが最小値に至り、その後また徐々に強まっていくというサイクルが見て取れます。酒田市と鶴岡市の数値を相互比較すると、酒田市の方が圧倒的に風が強く、各月鶴岡市の風速数値の倍近い値をたたき出しています。同じ庄内でも風速がこんなに違うんですね。
気象庁の過去気象データのうち、2015から2019年までの統計をもとに中山板金塗装工業で作成。
酒田・鶴岡の平均降水量
最後は、酒田と鶴岡の平均降水量についてです。下のグラフは、酒田市と鶴岡市の2015年から2019年の5年間における月ごとの平均降水量を示しています。両市の月ごとの平均降水量にはそれほど大きな差はなく、したがって時期経過による数値変化の傾向もまた似通っています。両市共に2月から7月が平均降水量が少ない期間であり、一番降水量の少ないのは3月となっています。8月から1月にかけては、9月に少し降水量が落ち着くことを除けば相対的に降水量の多い時期であると言えます。
気象庁の公開している気象データを参照し、2015年から2019年までの5年間の数値を平均して弊社で作成。
少し意外に感じたのは、一般的に梅雨とされて降水量が多そうな6月の降水量が実は少ないという点です。日本全国で見ると降水量が多くなる時期なのかもしれませんが、こと酒田・鶴岡を含む庄内地域においては、そのような傾向は見られませんでした。
酒田・鶴岡で塗装に最適な時期
ここまで、塗装に適した条件の洗い出しと、酒田市・鶴岡市の月ごとの気象条件データの掘り起こしを行ってきました。ここからは、いよいよそれらを組み合わせて酒田・鶴岡で屋根・外壁の塗装工事をするのに最適な時期を導き出していきます。
酒田・鶴岡で塗装に最適な時期の査定
それぞれの月において、気温、湿度、風速、降水量という項目ごとに5段階の評点付けをして、その合計値によって酒田・鶴岡の屋根・外壁塗装に適した時期を導き出すと、下記のような結果となります。
【備考】
どの項目も等しく重要なため、項目毎の重み付けによる点数の加算はせず、すべての項目の点数を平等に扱います。また、点数付けに際しては、下記を目安にしています。(ただし、降水量については相対的にゼロに近ければ近いほど点数を高くしています。)
5… 数値が、塗装に良好な条件とされる範囲内の中央値に近い。
4… 数値が、塗装に良好な条件とされる範囲内にある。
3… 数値が、塗装可能な条件とされる範囲内にあり、どちらかといえば塗装に良好な条件の閾値に近い。
2… 数値が、塗装可能な条件とされる範囲内にあり、どちらかといえば塗装に良好な条件の閾値から遠い。
1… 数値が、塗装が厳しい条件の範囲内にある。
どの項目も等しく重要なため、項目毎の重み付けによる点数の加算はせず、すべての項目の点数を平等に扱います。また、点数付けに際しては、下記を目安にしています。(ただし、降水量については相対的にゼロに近ければ近いほど点数を高くしています。)
5… 数値が、塗装に良好な条件とされる範囲内の中央値に近い。
4… 数値が、塗装に良好な条件とされる範囲内にある。
3… 数値が、塗装可能な条件とされる範囲内にあり、どちらかといえば塗装に良好な条件の閾値に近い。
2… 数値が、塗装可能な条件とされる範囲内にあり、どちらかといえば塗装に良好な条件の閾値から遠い。
1… 数値が、塗装が厳しい条件の範囲内にある。
鶴岡・酒田で塗装に最適な月は5月
表から見て取れる通り、気温、湿度、風速、降水量という複合的な条件を鑑みると、酒田・鶴岡で一番塗装に適している月は5月です。平均気温はおよそ17℃前後、湿度も70%を下回り、風も穏やかで降水量は年間でトップ3に入る少なさの月である5月。まさに、塗装工事のために存在しているような月だと言えます。
酒田・鶴岡で塗装に最適な時期は春から初夏
時期で言うと、先に上で塗装に最適な月として挙げた5月を含む4月~7月あたりが、酒田・鶴岡での塗装に最適な時期だと考えます。季節的には春から初夏にかけてといったところでしょうか。また9月、10月も条件としては良さそうなのですが、冬に向かって降水量が多くなりつつある時期であることを鑑みると4月~7月の好条件には今一歩及ばずといった感じがします。
最後に
一般的に塗装に適しているといわれている条件の確認と、各季節毎の気候データの提示をし、酒田・鶴岡での屋根・外壁の塗装に最適な時期を検討した結果は下記の通りです。
・酒田、鶴岡で屋根や外壁の塗装に最適な時期は春から初夏
・春から初夏という時期の中でも一番条件が良い月は5月
酒田・鶴岡をはじめ遊佐町や三川町など庄内地域にお住いの塗装工事をお考えのみなさんにとって、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。みなさまの外壁塗装工事に幸あらんことを。